あとがき

 なんか、好きに生きていいんだ。
 たったの12日間ではあったが、1人で北海道を一周して思ったこと。当たり前だけど、人生で初めて行く北海道に知ってる人なんかまずいなくて、それでも、いつもより人と話したような気がする12日間だった。コンビニの店員さんから、道の駅のおじいちゃん、スーパーのおばちゃんから、地元のライダー、ひとり旅の人や、居酒屋のお姉さん、ライダーハウスで出会って仲良くなったみんな。両手両足では足りないくらい色んな人とたくさん話をした。その中でお互いの名前を知っている人は片手とすこし。でもすごく楽しかった。時には友達にも喋らないようなことも話した。どんな人で、人と何が違くて、何を気にしてるかなんて、関係なかった。偶然ここで出会ったから、僕たちは話している。経緯はそれぞれあるにしても、この瞬間、この場所に重なったから一緒にいる。それだけだった。

 天気のいい昼すぎ、一人で走っている時、思い出す。忘れていた。あんなに、ずっと、ところ構わず、もしかしたら永遠に続くのかもしれないと思うほど苦しかったはずのもの。だからどうしたとでも言うように、空は広く、海は穏やかで、山は大きく、どこまでも道は遠く続いていた。ああ、何でもないんだ。自由でいいんだ。そもそも何者でもないのだから、好きにしていいんだと、大空と、広い大地が、教えてくれていた。
 ぜんぜん気にしないということは無理だろう。色んなことに負い目を感じて生きていくのも確かだろう。でも僕は、それ以前にでかい世界の中に立っているだけの、人間だ。それだけは何も変わらないのだ。

 どうにも分からなくなったら、深呼吸して、あの大きな世界を思い出そう。青い空に呑まれるように、透きとおる海に沈むように、ゆたかな山々に包まれるように、そしてまた気が付くのだろう。全てが自分の力でなくっても、この世界に、ちゃんとまだ、立ってるってことに。

 あー、はずかし。