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 周りの人が起き出す気配で僕も起きた。良い天気だ。僕はこのまま単車で1時間半ほどの小樽に行ってフェリーの時間までブラブラしようと思っていたのだが、室蘭に行っていないことを大先輩に言うと、「じゃあ室蘭に行ってきたらええよ。支笏湖通って、室蘭の先の地球岬まで行って、洞爺湖回って小樽帰ってきたらええくらいちゃうかな。小樽に1日おってもな」ということで急遽300キロほど走ることになった。

 この日はみんな8時には外に出て荷物を積んでいた。スーパーカブの彼が一番に出た。そのあとGLが大きな音とともに去っていき、ぼくもその後を追いかけた。支笏湖までは、地元のライダーが群れをなして走っていて、その最後尾について行くと、湖を半周するような形で南下した。支笏湖は大きく、また綺麗だった。北海道の湖という湖の水はほとんど綺麗なのだが。初日に通った白老の海辺の道をずっと南下し、地球岬に到着した。展望台は工事で上がれなくなっていたが、柵のギリギリまで身を乗り出してみると、遠くの海がなんだか丸く向こう側に飲み込まれているような感じで、地球が丸いというのを教えてくれているようだった。室蘭から北上するには湾を渡るおおきな橋があったが、通行止になっていて、湾をぐるっと回らなければならなかった。すぐに洞爺湖に差し掛かって、中山峠を越え、休む間もなく朝里のダムまで走った。峠を越えて見えてきたそのダムは驚くほど大きく、大自然の中にコンクリートが剥き出しの壁で水を堰き止めていた。裏側は公園のようになっていて味気なかったが、南側から見るダムは北海道でも最も素晴らしいところの一つだと思った。

 フェリー乗り場に到着し、今日の夜のチケットを買って、単車を置いて小樽の街に出た。古い建物が多く、どれをとっても雰囲気のある、石造りの街だった。昔栄えていたころの面影が伺えた。地元の名店だという揚げ鳥屋のざんぎ定食を大盛りで食べた。

 最後になったが、セイコーマートのカードを作った。もう北海道を出るのに何のためにというと、また来たいと思ったから、としか言いようがなかった。そろそろ船の時間だ。埠頭まではバスが出ているらしいので、だれも乗らないそのバスにひとりさみしく乗車して船に乗り込んだ。五階建ての船のデッキから見る小樽の街は、なんだかあっけなかったが、雪国らしいオレンジの街灯に哀愁とでもいうべき懐かしさがあるような気がした。その時急にあー、本当にここを去るのだ、と思った。京都に帰る、というより、北海道を出ていく、という気持ちだった。来た時はお邪魔します、と思ったのに不思議だ。ありがとう、なんだかずっと楽しかったな、また来るよ、さよなら。