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9/20

 朝起きると、昨日いた10人のうちの半分は既に出たようだった。僕は昨日から8時起き、9時発を宣言していたので、8時以前に出ると言っていた人々には挨拶を済ませていた。階下では、昨日最後まで話していた同い年の奴が今日の計画を立てながら、台風のニュースを見ていた。階段を降りていくと、「いってらっしゃい?」疑問系だった。「まだ行かんで」「なんや。送り出す準備出来てたのに」そう言ってすぐ、「俺が最後と思ってたけど違ったな。送り出すの寂しいじゃん」と笑った。「一緒に出ようか」というと、「9時でしょ?それなら俺のが早いわ」と返されたが、結局ニュースを見ながら話していると一緒に出ることになった。荷物を積み終えるころにはちょうど9時だった。「荷物積むだけで20分くらいかかるよな。俺8時半に出るつもりやったんやけどな」「僕は予定通りやな。9時やし」「なにそれ、俺が図られたみたいじゃん」「まぁ、お互い最後の1人にならんくて良かったやん」「たしかに!」そう話していると、朝には見にこないから、勝手に出て行ってくれと言っていたおばちゃんが現れた。「君たちが最後?」「「あっ!」」僕たちは一枚ずつ、買い忘れて諦めていたみどり湯のステッカーを買った。そしてまた、「それじゃ、お気を付けて。腹減ったなあ」「セコマあるやん、そこに。お気を付けて」なんて笑いながら細道から大通りに出て、時計回りの彼とは反対方向に出発した。
 かの有名なオロロンラインを南下した。空は昨日と澄んだ色の濃い青空とは打って変わって、くすんだ淡い水色をしていたが、雨が降っていないのが救いだった。海沿いの道には綺麗に一列に風力発電の風車が並んでいた。オロロン鳥の像を横目に、陸はそっちのけで海を眺めて走った。休憩に単車を止めた時、ちょうどオロロンラインを北上してきたライダーと会った。「ショサンベツで酷い雨にやられましたよ。そっちはどうですか?」「僕は降られませんでしたけど、ちょっと前に降ったみたいですね。ところどころ水たまりがあったので。今は大丈夫だと思います」「下るんだったらちょっと待った方がいいかもですね」というので、僕は道の駅で少し長い休憩を取った。喫煙所でワッカナイから暇つぶしにドライブに来たというおじいさんと、娘だろうか、連れの女性と世間話をしたので、何もないところだったが、暇はしなかった。
 雨にもやられずに、途中ハボロで飯を食った。緩やかな峠を越え、何度か覆道を通った。日の光が射し込んで柱が陰になっているのがとても綺麗だった。ナビの場所とは違ったため宿への道を尋ねながら、暗くなる少し前には今日の宿に到着した。イシカリの浜辺のすぐ近くにある無料のライダーハウスだ。聞いていた通り、小さいログハウスだったが、中は綺麗でいい匂いがした。寒くもなさそうだ。ログハウスの前が浜の砂なので、サイドスタンドが埋もれて倒れないように敷板を探した。前では電線の工事をしていた。あまりにも人がいないので少し寂しくなって、人の気配が欲しくてログハウスの前で工事をしているのを見ながら飯を食ったから、多分工事の人にはおかしな風に思われていただろうが、仕方がなかった。

 暗くなるまで時間がありそうだったので浜辺を散歩した。海水浴場らしいが、もう寒い、夕暮れ時の海には人っ子ひとりいなかった。ぼくは見張り台の上に登ってしばらく海を眺めると、後から来るかもしれないライダーの為に敷板を何枚か拾ってログハウスに戻った。結局この日は僕一人だった。