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 昨晩はフェリーを降りて半刻ほど西に向かって走り、苫小牧市街地のネットカフェ自遊空間に泊まった。愛知からのBMWの中年男性は苫小牧港付近のライダーハウスに宿をとっているそうなので別れ、香川ナンバーの青年のあとについて市街地に出た。夜なので警戒していたが、目的地までの道は広くまっすぐで、すぐに明るい市街地に出た。9月中旬、夜の北海道は思っていたより寒い。眠れるうちにたっぷり睡眠を取ったほうが良さそうだった。ドリンクコーナーの暖かいスープを飲んで、日が変わる前に眠った。
翌朝、アイヌ民族博物館でオハウを食べた。
 これから東へ。反時計回りで北海道を一周する予定だ。いったんエリモ岬に向けて海岸線を南下し、道もなくなってくるころ道央に向けて北上した。シホロ高原に近付くにつれ、緑の豊かな木々の中に白い木が混ざっているのを見た。

 東ヌプカウシヌプリ山の麓でテントを張った。姿は見えなかったが、僕のほかにふた張りテントが張ってあった。高原だからか、北海道だからか、あるいはそのどちらもである可能性のほうが高いが、凍えるほど寒かった。炊事場に置いてあった湿気った木になんとか火をうつし、焚き木をしながらめしを食った。月の綺麗な夜だ。言われてみれば今日は満月であった。雲の切れ間から時々覗く月明かりが何よりも明るかった。山から吹き降ろす風は強く、木々が音を立ててしなっていた。夜が更けるに連れて風が強まり、僕がテントのはためく音に悩まされながらも寝かけた時、一際大きな風の音と共にテントが倒れた。

 「こっちに越して来ても?」テントが倒れた際にひとつ上のサイトにテントを張っていた人が見に来たので、テントの倒れていない彼らのほうへ引っ越すことにした。風除けになりそうな建物の陰にテントを張りなおしたころには少し疲れて、さっきよりは寝るのに苦労しなさそうだった。一晩中山は唸っていた。アイヌ民族では山には山の神がいると言われてきたそうだが、ヌプカウシヌプリを見上げてみれば、あれを神と言うのも頷ける。僕らがいつも見ている山とは、明らかに様子が違った。緑色の草の山に、白や茶色の、葉の落ちた裸の木々がまばらに立っていた。明け方雨が降った。テントを張りなおした時には暗くて見えなかったが、若干地面が窪んでいて、そこに水が溜まり、浸水してしまっていた。寝袋を越してズボンまでも濡れていた。