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9/15


 窓の光で起きた。6時前だった。もしかしたら朝日が見られるかもしれないと思いオープンデッキに向かったが、あいにくの雲で太陽は見えなかった。今日は1日船の中にいるのだ。そう早く起きていても仕方がない。部屋に戻り、もう一度意識を飛ばすまでには時間がかかった。11時を過ぎたころ、船内アナウンスで目が覚めた。船内にあるレストランで昼食を開始する旨のアナウンスだが、僕はフェリー内での食事は高価であることを承知していたので、持ってきていたパンと自販機で缶入りの牛乳を買ってコンビニ袋をぶらさげオープンデッキに向かった。どうもオープンデッキは人気がないようで、昼過ぎと言っても僕だけだ。パソコンを持ち込みゼミの提出書類をあらかた作り終えたあとは、1冊だけ持ってきていた小説を読んで過ごした。喫煙は船内のスモーキングスペースに限られており、僕はその部屋のにおいが好きではなかったが、結局は何度か行かなくてはならなかった。
 「船長の・・・です・・・現在、速力27ノット、時速50キロで順調に航海中です・・・波は穏やかで、苫小牧港への着港は20時30分、午後8時半を予定しております・・・」僕は大型フェリーに乗るのは4度目、客室クルーズ船は過去2度ほど経験したがいずれも風や波は穏やかで天気も良く、クルーズ日和だと告げられていた。今回の船旅も上々である。

 船内では各々到着までの時間をくつろいでいた。年齢層は比較的高く、ドライブか、ツーリングか、机に大判の地図を広げている人も何人か見かけた。顔見知りになった3、4人の人とすれ違うたびに挨拶しながら、順調に航海していた。
 夕暮れ時になって、船は津軽海峡を横断した。昼間誰もいなかったオープンデッキでは、落日を見るためか、または見えてきた目的地を確認するためか、何人かが海に向かって手摺に肘をついていた。僕も彼らに習い身を乗り出すと、左手には青森の山が、右手には函館の街と函館山が霞んで見えていた。快晴である。落日の橙と澄んだ空の青のグラデーションが、僕には綺麗だとしか言いようがなかった。
 津軽海峡を横断してから3時間ほどで船は苫小牧港に着港した。